MENU
医療機関名
●●クリニック
診療科目
内科・糖尿病内科・内分泌内科
オンライン診療時間
9:00〜22:00(年中無休)
医療機関届出番号
第●●●●号
所在地
東京都●●区●●1-2-3 ●●ビル●F

糖尿病は完治する?寛解の可能性と原因・対策を解説

「糖尿病と診断されたが、この病気は本当に治るのだろうか」。外来診療の現場では、こうした不安や疑問を多く耳にします。インターネット上では「治った」「完治した」という表現を目にすることもありますが、医学的には慎重な理解が必要です。

結論からお伝えすると、現在の医療で糖尿病を完全に“完治”させることは難しいとされています。
ただし、これは悲観すべき話ではありません。近年の糖尿病治療では、「完治」に代わる現実的で前向きな目標として「寛解(かんかい)」という考え方が重視されています。

寛解とは

薬に頼らなくても血糖値を正常範囲に保てている状態を指します。つまり、糖尿病と診断されても、適切な治療と生活習慣の改善によって、健康な人とほぼ変わらない生活を送れる可能性があるということです。

この記事でわかること
・糖尿病が「完治しにくい」とされる理由
・治療の新たなゴールである「寛解」とは何か
・寛解を目指せる人の条件と具体的な方法

本記事では、「糖尿病は治るのか?」という多くの方が抱く疑問に対し、完治と寛解の違いを整理しながら、寛解を目指すための条件や具体的な治療の考え方、さらには最新の治療動向までを、医療の視点から分かりやすく解説します。将来への不安を整理し、前向きに治療に向き合うための参考として、ぜひ最後までご覧ください。

目次

糖尿病の「完治」と「寛解」の決定的な違い

糖尿病について調べていると、「完治」「治った」「寛解」といった言葉を目にすることがあります。しかし、これらの言葉は医療の現場では同じ意味では使われていません。まずは、それぞれの違いを正しく理解することが重要です。

糖尿病における「完治」と「寛解」の違い

完治 寛解
病気の状態 病気の原因そのものがなくなった状態 病気は残るが症状・数値が安定している状態
血糖値 完全に正常で再上昇しない 正常範囲を維持している
治療の必要性 基本的に不要 薬は不要でも生活管理は必要
再発の可能性 ほぼない 生活習慣次第で再燃する可能性あり

このように、完治と寛解は似ているようで意味合いが大きく異なります。糖尿病では、感染症のように原因が完全に消失するケースは考えにくく、現在の医療では「完治」という表現は基本的に用いられていません。

「完治」が難しいとされる理由

体質や遺伝的要因が関係しているため

糖尿病、特に2型糖尿病は、生活習慣だけでなく体質や遺伝的要因が複雑に関与しています。

インスリンの分泌能力や効きやすさは生まれつきの影響を受けるため、原因そのものを完全に取り除くことは難しいとされています。

インスリン分泌能力が年齢とともに低下するため

すい臓のβ細胞が分泌するインスリンの量は、年齢とともに徐々に低下していきます。

一時的に血糖値が安定しても、長期的には再び上昇する可能性があるため、「治った」と言い切ることができません。

糖尿病治療で「寛解」が目標とされる理由

薬に頼らず血糖値を保てる状態を目指すため

糖尿病の寛解とは、薬に頼らなくても血糖値が安定し、健康な人と同じような数値が一定期間続いている状態のことです。

治療の効果がしっかり現れている、理想的に近い状態と考えられます。

合併症リスクを大きく下げられるため

血糖値が安定している状態を維持できれば、網膜症・腎症・神経障害といった合併症の発症リスクを大きく下げることができます。

合併症のリスクを下げることは、糖尿病治療における最大の目的でもあります。

「治療終了」ではなく「良好な管理状態」である点に注意

寛解は糖尿病が完全に治った状態を意味するものではありません。生活習慣が乱れたり体重が再び増加したりすると、血糖値が再上昇する可能性があります。

そのため、寛解後も定期的な血糖値やHbA1cの検査を続け、生活習慣の管理を継続することが重要です。寛解は治療の終点ではなく、良好なコントロールを維持していくための一つの到達点と考える必要があります。

糖尿病で寛解した人はいる?寛解を目指せる人の条件

「寛解という目標は理解できたが、実際にそこまで改善する人はいるのだろうか」と疑問に感じる方も多いでしょう。結論から言うと、条件が整えば寛解に至る人は実際に存在します。特に2型糖尿病では、治療開始のタイミングや生活習慣の改善状況によって、寛解を目指せる可能性があります。

寛解が期待できるのは主に「2型糖尿病」

糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病がありますが、寛解が現実的な治療目標となるのは主に2型糖尿病です。

  • 1型糖尿病
    自己免疫などが原因で、インスリンを分泌する膵β細胞が破壊される病気です。インスリン分泌がほとんど期待できないため、現時点では寛解を目指すことは困難です。
  • 2型糖尿病
    遺伝的素因に加え、過食や運動不足、肥満などの生活習慣が関与し、インスリンの分泌低下や効きの悪さが生じる病気です。

    2型糖尿病では、インスリンを分泌する能力がある程度残っているケースが多く、生活習慣を改善することで血糖コントロールが可能になる可能性があります。

    早期発見・早期治療が寛解への鍵

    糖尿病の寛解を考えるうえで大切なのが、すい臓にある膵β細胞の働きです。

    膵β細胞とは

    血糖値が上がったときにインスリンというホルモンを出し、血糖値を下げる役割を担う細胞。

    2型糖尿病では、発症したばかりの段階であれば、この膵β細胞の働きがすべて失われているわけではありません。まだ十分に働ける余力が残っている状態であることが多いと考えられています。

    しかし、高血糖の状態が続くと、膵β細胞は無理をしてインスリンを出し続けることになり、次第に疲れてしまいます。その結果、インスリンをうまく出せなくなり、血糖値がさらに上がりやすくなります。このような悪循環を「糖毒性」と呼びます。

    一方で、糖尿病と診断された早い段階で治療を始め、食事や運動、必要に応じた薬の力を借りて血糖値を早めに下げることができれば、膵β細胞を休ませ、本来の働きを取り戻せる可能性があります。これが、早期発見・早期治療が寛解につながりやすいとされる理由です。

    肥満を合併している場合の体重減少効果

    2型糖尿病では、体重が増えることでインスリンが効きにくい状態になり、血糖値が下がりにくくなる傾向があります。そのため、肥満を合併している場合は、体重を減らすこと自体が治療の一部と考えられています。

    体重が減るとインスリンの効きが改善し、血糖値も下がりやすくなります。特に、現在の体重の5〜10%程度の減量でも、血糖コントロールが改善するケースは少なくありません。

    無理な減量よりも、続けられる体重管理が寛解への近道

    極端な食事制限を続けるよりも、日々の食事や運動を少しずつ見直し、長く続けられる形で体重管理に取り組むことが、結果として寛解を目指しやすい方法といえます。

    糖尿病を寛解に導くための具体的な方法

    糖尿病の寛解を目指すために、特別な治療が必要というわけではありません。基本になるのは、毎日の食事と体の動かし方を少しずつ整えることです。これに必要に応じて薬の治療を組み合わせていくのが、現実的な進め方になります。

    食事療法:血糖コントロールの基本

    食事は、血糖値にいちばん影響するポイントです。ただし、「甘いものを全部やめる」「量を極端に減らす」といった方法は、長く続きません。大切なのは、血糖値が上がりにくい食べ方を知ることです。

    カロリー摂取量の適正化

    食事療法の基本は、1日に必要なエネルギー量を大きく超えないことです。その目安として使われるのが、標準体重をもとにした計算方法です。

    標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で求めます。例えば、身長170cmの方の場合は、1.7×1.7×22=約64kgが標準体重になります。

    次に、標準体重に活動量を掛けて、1日の目標エネルギー量を考えます。目安は次のとおりです。

    • デスクワーク中心:標準体重×25〜30kcal
    • 立ち仕事が多い:標準体重×30〜35kcal

      先ほどの例で、デスクワーク中心の場合は、64kg×25〜30kcalとなり、1日あたり約1,600〜1,900kcalが目安になります。

      細かく計算できなくても「この範囲を意識する」だけで十分

      実際には、毎食きっちり計算する必要はありません。間食を控える、夜遅い食事を減らすなど、一つの習慣を見直すだけでも摂取エネルギーは自然に下がります

      栄養バランスを意識した食事

      食事量とあわせて大切なのが、栄養のバランスです。主食や脂っこい料理に偏ると、食後の血糖値は上がりやすくなります。

      野菜やきのこ、海藻類に多く含まれる食物繊維は、糖の吸収をゆるやかにします。食事の最初に野菜から食べるだけでも、食後血糖値の上がり方は変わってきます。

      また、主食を抜くのではなく、白米を少し減らす、玄米や雑穀米に置き換えるといった工夫でも、血糖コントロールは改善しやすくなります。

      運動療法:インスリンの効果を高める

      運動には、血糖値を下げやすくする効果が期待できます。体を動かすと、インスリンの力を借りなくても筋肉が糖を取り込むようになり、血糖値が自然に下がりやすくなるためです。

      「運動が苦手」「時間が取れない」という方でも心配はいりません。大切なのは、ハードな運動をすることではなく、無理なく続けられる動きを生活の中に取り入れることです。

      有酸素運動で血糖値を下げやすくする

      ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、血糖値を直接下げる効果が期待できます。目安としては、1回30分程度を週に3〜5回、合計で週150分以上の運動が推奨されています。

      運動の強さは、「少し息が弾むが会話はできる」程度で十分です。きつい運動を短期間行うよりも、軽めの運動を習慣にするほうが血糖コントロールには効果的です。

      有酸素運動は「頑張る」より「続ける」ことが血糖改善につながる

      筋トレで血糖値が上がりにくい体をつくる

      筋トレには、血糖値が上がりにくい体をつくる効果があります。筋肉は糖を多く使うため、筋肉量が増えると、同じ食事でも血糖値が上がりにくくなります。

      目安としては、週に2〜3回、スクワットや軽い筋トレを行う程度で十分です。ジムに通う必要はなく、自宅でできる運動から始めても問題ありません。

      運動を続けるためのポイント

      運動療法で最も大切なのは、継続することです。まとまった時間が取れない場合でも、10分程度の運動を1日3回に分けて行えば、同じ効果が期待できます。

      エレベーターを階段に変える、一駅分歩くなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすだけでも、血糖コントロールの助けになります。

      薬物療法:医師との連携で寛解を目指す

      寛解は「薬を使わない状態」を目標としますが、治療の途中で薬を使うこと自体は珍しいことではありません。特に、血糖値が高い状態が続いている場合は、一時的に薬の力を借りたほうが、結果として寛解に近づきやすいケースもあります。

      高血糖の状態が続くと、すい臓は無理をしてインスリンを出し続けることになり、膵β細胞の働きが弱ってしまいます。そのため、早い段階で血糖値を下げて、すい臓を休ませることが重要になります。

      初期は薬で血糖値を整えることもある

      診断直後や血糖値がかなり高い場合には、飲み薬や注射薬を使って血糖値を速やかに下げることがあります。これは「薬に頼り続ける」ためではなく、血糖値を一度リセットするための治療と考えると分かりやすいでしょう。

      実際に、数か月から1年程度しっかり血糖コントロールを行い、その後に生活習慣の改善が進むことで、薬を減らしたり中止できたりするケースもあります。

      最初に薬を使うことが、将来的に薬を減らす近道になることもある

      自己判断で薬をやめないことが重要

      血糖値が下がってくると、「もう治ったのでは」と感じる方もいますが、自己判断で薬をやめるのは危険です。急に薬を中止すると、血糖値が再び大きく上昇することがあります。

      薬の量を減らす、あるいは中止する判断は、血糖値やHbA1cの推移を見ながら、医師と相談して進める必要があります。目安としては、HbA1cが6%台前半で安定している状態が一つの判断材料になることもあります。

      生活習慣の改善と薬はセットで考える

      薬物療法だけで寛解を目指すことは難しく、食事療法や運動療法と組み合わせることが前提になります。薬はあくまで治療を助ける役割であり、主役は日々の生活習慣です。

      医師と連携しながら治療を進めることで、無理なく血糖値を整え、将来的に薬に頼らない状態を目指すことができます。

      糖尿病完治の新薬は?治る時代に向けた最新治療の展望

      現在の医療では、糖尿病を完全に治す「完治」は難しいとされていますが、治療の選択肢は年々進歩しています。近年は、血糖値を下げるだけでなく、体重管理や合併症予防まで考えた治療が登場し、寛解を目指しやすい環境が整ってきました。

      最新の糖尿病治療薬の動向と可能性

      近年注目されているのが、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬といった新しいタイプの糖尿病治療薬です。この薬は血糖値を下げる作用に加えて、体重減少をサポートする効果が期待できます。

      特に肥満を合併している2型糖尿病では、体重が減ることで血糖コントロールが改善し、結果として薬を減らせるケースもあります。従来よりも、寛解を目指しやすくなったといえるでしょう。

      再生医療や遺伝子治療などの先進研究

      将来に向けた研究として、iPS細胞を用いた再生医療や遺伝子治療の研究も進められています。これらは、インスリンを分泌する膵β細胞の働きを根本から改善することを目指す治療法です。

      現時点では研究段階であり、すぐに実用化されるものではありませんが、将来的に糖尿病治療の選択肢がさらに広がる可能性はあります。

      糖尿病が「治る時代」は来るのか?専門家の見解

      専門家の間では、「すべての糖尿病が簡単に治る時代がすぐに来る」と考えられているわけではありません。

      一方で、治療薬の進歩と生活習慣改善を組み合わせることで、「治ったに近い状態」を長く維持できる人は確実に増えているという見方が主流です。

      最新治療は魔法の薬ではなく、寛解を支えるための選択肢の一つ

      現実的には、新しい治療に過度な期待を寄せるよりも、今使える治療を上手に活用し、主治医と相談しながら自分に合った方法を選ぶことが大切です。

      糖尿病の完治・寛解に関するよくある質問

      Q1. 糖尿病は完全に治せますか?

      現時点の医療では、糖尿病を完全に治す「完治」は難しいと考えられています。ただし、治療や生活習慣の改善によって、薬を使わずに血糖値が安定する「寛解」を目指すことは可能です。

      寛解に至れば、日常生活は健康な人とほぼ変わらず過ごせるケースも少なくありません。

      Q2. 糖尿病でも長生きできますか?

      はい、十分に可能です。血糖値を良好にコントロールし、血圧や脂質の管理も行えば、合併症のリスクを大きく下げることができます

      実際には、糖尿病をきっかけに生活習慣を見直し、以前より健康的な生活を送れるようになる方も多くいます。

      Q3. 1型糖尿病でも寛解はありますか?

      1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵β細胞が破壊される病気のため、2型糖尿病のような寛解は現状では難しいとされています。

      発症直後に一時的に血糖値が安定し、インスリン量が減る「ハネムーン期」と呼ばれる時期がみられることがありますが、これは寛解とは異なります。

      Q4. 寛解後に再発しないために気をつけることは?

      寛解は治療の終了ではありません。生活習慣が乱れると、血糖値が再び上昇する可能性があります。

      寛解後も、食事や運動の習慣を続け、定期的に血糖値やHbA1cを確認することが大切です。

      Q5. テレビやネットで紹介されている方法は効果がありますか?

      健康番組やインターネットで紹介される方法の中には、参考になる内容もありますが、すべての人に同じ効果があるとは限りません

      試す前には主治医や管理栄養士に相談し、ご自身の治療方針に合うかを確認することが重要です。

      まとめ:糖尿病の完治は困難だが、寛解を目指し専門医へ相談を

      糖尿病は、現在の医療では完全に治すことが難しい病気とされています。しかし、治療や生活習慣の改善によって、薬を使わずに血糖値が安定する「寛解」を目指すことは十分に可能です。

      寛解に近づくためには、食事量や内容の見直し、無理のない運動の継続、必要に応じた薬物療法を組み合わせることが重要です。特に、発症から早い段階で治療を始めるほど、寛解の可能性は高まります。

      また、寛解は「治療が終わった状態」ではなく、良好な血糖コントロールを維持している状態である点にも注意が必要です。生活習慣が乱れれば、再び血糖値が上昇することもあります。

      糖尿病は「正しく向き合えば、コントロールできる病気」

      糖尿病と診断されると不安を感じる方も多いと思いますが、一人で抱え込む必要はありません。主治医や糖尿病専門医と相談しながら、自分に合った治療を続けていくことが、将来の健康を守る一番の近道です。


      免責事項:本記事は、糖尿病に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。治療方針については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

      よかったらシェアしてね!
      • URLをコピーしました!
      • URLをコピーしました!
      目次