糖尿病1型と2型の違いとは？原因・症状・治療法を徹底比較

自分や家族の健康診断結果を見て、「糖尿病かもしれない」と不安になったことはありませんか。あるいは、すでに糖尿病と診断され、「1型と2型の違いがよく分からない」「自分はどちらなのか知りたい」と感じている方も多いかもしれません。

糖尿病には大きく分けて「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2つのタイプがあります。名前は似ていますが、発症の原因、病気の成り立ち、治療の考え方はまったく異なります。違いを知ることは、糖尿病と向き合うための大切な第一歩になります。

この記事では、「糖尿病 1型 2型 違い」という疑問に対して、医学的な根拠に基づきながら、専門知識がない方でも理解できるよう丁寧に解説します。

糖尿病1型と2型の違いが一目でわかる比較一覧表

糖尿病には「1型」と「2型」がありますが、名前が似ているため混同されやすく、「何がどう違うのか分かりにくい」と感じる方は少なくありません。

そこでまずは、両者の違いを原因・症状・治療法などの重要なポイントに絞って、一覧表で整理します。

細かな仕組みは後ほど詳しく解説しますので、ここでは全体像をつかむことを意識してご覧ください。

糖尿病の基礎知識｜血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」

糖尿病を理解するうえで欠かせないのが、インスリンというホルモンの働きです。1型糖尿病と2型糖尿病の違いも、突き詰めるとインスリンが「作れない」のか、「うまく働かない」のかという点に集約されます。

まずは、インスリンが体の中でどのような役割を担っているのかを整理していきましょう。

インスリンとは？血糖値を調整する重要なホルモン

インスリンは、膵臓（すいぞう）から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませる働きを担っています。

食事をすると、炭水化物などが分解されてブドウ糖となり、血液中に取り込まれます。これがいわゆる血糖値が上がった状態です。

このときインスリンが分泌されることで、ブドウ糖は筋肉や肝臓、脂肪細胞に運ばれ、エネルギーとして使われたり、必要に応じて蓄えられたりします。

インスリンが不足すると体の中で何が起こる？

インスリンが十分に分泌されない、または分泌されていても効きが悪くなると、血液中のブドウ糖を細胞に取り込めなくなります。

その結果、体の中では次のような状態が同時に起こります。

この「エネルギー不足」を補おうとして、体はさらに食欲を高め、甘いものや炭水化物を欲するようになります。これが、糖尿病の方が空腹感や甘いものへの欲求を感じやすい理由の一つです。

また、高血糖の状態が続くと、血管や神経にダメージが蓄積し、さまざまな合併症の原因になります。

1型糖尿病と2型糖尿病におけるインスリンの違い

1型糖尿病と2型糖尿病では、インスリンの問題点が異なります。

この違いにより、治療の考え方も大きく変わります。

1型糖尿病では、体内でインスリンを作れないため、外からインスリンを補う治療が不可欠です。

一方、2型糖尿病では、生活習慣の改善や薬物療法によって、インスリンの効きを高めたり、分泌を助けたりする治療が行われます。

1型糖尿病とは？インスリンが枯渇する自己免疫疾患

1型糖尿病は、体内でインスリンをほとんど、あるいは全く作れなくなる病気です。糖尿病という名前から生活習慣が原因と思われがちですが、発症の仕組みは2型糖尿病とは根本的に異なります。

この病気の本質は、自己免疫の異常です。本来、体を守るはずの免疫システムが誤って膵臓のβ細胞を攻撃し、インスリンを分泌できなくなってしまいます。

そのため、1型糖尿病は生活習慣病ではなく、自己免疫疾患に分類されます。

1型糖尿病の原因｜免疫異常による膵臓β細胞の破壊

1型糖尿病では、何らかのきっかけによって免疫システムが異常を起こし、インスリンを作る膵臓のβ細胞を自分の体の一部として認識できなくなると考えられています。

現在の医学では、明確な発症原因は完全には解明されていませんが、次のような要因が関与している可能性が指摘されています。

これらが単独、または複合的に作用することで、β細胞が破壊され、インスリン分泌が急激に低下します。

1型糖尿病の主な症状｜急激に進行するのが特徴

1型糖尿病の大きな特徴は、発症から症状が現れるまでの進行が比較的早いことです。

インスリンが急激に不足するため、短期間のうちに次のような症状が現れます。

さらに進行すると、体はエネルギー不足を補うために脂肪を分解し始め、糖尿病ケトアシドーシスと呼ばれる重篤な状態に陥ることがあります。

この状態では、吐き気や腹痛、意識障害を起こすこともあり、緊急の治療が必要です。

1型糖尿病の治療法｜インスリン補充療法が不可欠

1型糖尿病では、体内でインスリンを作ることができないため、インスリン補充療法が治療の中心となります。

具体的には、次のような治療が行われます。

インスリン治療は一生続くものですが、適切な管理を行うことで、健康な人とほぼ変わらない生活を送ることも可能です。

1型糖尿病の【発症年齢・体型】子どもや若年層、やせ型に多い

1型糖尿病は、小児期から若年層にかけて発症することが多い糖尿病です。そのため、「小児糖尿病」と呼ばれることもありますが、実際には成人してから発症するケースも少なくありません。

発症年齢については、次のような特徴があります。

また、体型の面ではやせ型〜標準体型の方に多い傾向があります。これは、1型糖尿病では肥満や過食が主な原因ではなく、インスリンが作れなくなること自体が問題の本質であるためです。

インスリンが不足すると、体は十分にブドウ糖を利用できず、エネルギー不足を補うために脂肪や筋肉を分解します。その結果、急激な体重減少がみられることもあります。

2型糖尿病とは？インスリンの効きが悪くなる生活習慣病

2型糖尿病は、日本の糖尿病患者さんの約9割以上を占める、最も多いタイプの糖尿病です。

1型糖尿病とは異なり、2型糖尿病ではインスリンがまったく作られなくなるわけではありません。しかし、インスリンの働きが弱くなったり、分泌量が不足したりすることで、血糖値が高い状態が続きます。

この状態は、主に生活習慣の乱れと深く関係しており、2型糖尿病は生活習慣病に分類されます。

2型糖尿病の原因｜生活習慣と体質が重なって発症する

2型糖尿病は、生まれつきの体質（遺伝的要因）に、日々の生活習慣が重なることで発症すると考えられています。

特に関係が深い生活習慣には、次のようなものがあります。

• 食べ過ぎ・間食の習慣化
• 糖質や脂質に偏った食事
• 運動不足
• 肥満（特に内臓脂肪の蓄積）
• 慢性的なストレスや睡眠不足

これらが続くことで、筋肉や肝臓などの細胞がインスリンに反応しにくくなり、インスリン抵抗性と呼ばれる状態が生じます。

インスリン抵抗性とは？2型糖尿病の本質

インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されていても、その働きが十分に発揮されない状態を指します。

インスリン抵抗性が起こると、体は血糖値を下げるために、より多くのインスリンを分泌しようとします。その結果、すい臓には大きな負担がかかります。

この状態が長期間続くと、次第にすい臓が疲弊し、インスリンの分泌量そのものが低下していきます。こうして血糖値を十分に下げられなくなり、2型糖尿病が進行します。

• 初期：インスリンは出ているが効きが悪い
• 進行期：インスリン分泌量が低下

2型糖尿病の主な症状｜初期は気づきにくい

2型糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がないことが多いのが特徴です。

そのため、健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。

病状が進行すると、次のような症状が現れることがあります。

• 喉が渇きやすい
• 尿の量や回数が増える
• 疲れやすい、だるさが続く
• 目がかすむ

これらの症状は、加齢や疲労と見過ごされやすいため、早期発見が非常に重要です。

2型糖尿病の治療法｜生活習慣の改善が治療の土台

2型糖尿病の治療では、食事療法と運動療法が基本となります。

これにより、インスリンの効きを改善し、血糖値を安定させることを目指します。

• 食事療法：適切なエネルギー量と栄養バランスを意識
• 運動療法：筋肉で糖を使いやすくする

血糖コントロールが不十分な場合には、内服薬や注射薬が追加されることもあります。治療内容は病状や生活スタイルに応じて個別に調整されます。

2型糖尿病の【発症年齢・体型】中高年、肥満傾向の方に多い

2型糖尿病は、中高年以降に発症するケースが多い糖尿病です。特に40歳以上で発症する方が多く、年齢とともにリスクが高まる傾向があります。

ただし、近年では食生活の変化や運動不足の影響により、20代・30代など若い世代で発症するケースも増加しています。年齢だけで安心できる病気ではありません。

体型の面では、肥満傾向の方に多いことが知られています。特に注意が必要なのが、見た目では分かりにくい内臓脂肪の蓄積です。

一方で、2型糖尿病はやせ型の方でも発症することがあります。特に、日本人を含むアジア人は、欧米人に比べてインスリン分泌能力が低い傾向があり、体重がそれほど多くなくても糖尿病になることがあります。

糖尿病1型と2型の違いを5つの観点からわかりやすく比較

1型糖尿病と2型糖尿病は、どちらも血糖値が高くなる病気ですが、成り立ち・進行・治療の考え方は大きく異なります。

ここでは、混同されやすいポイントを5つの観点から整理し、それぞれの違いを分かりやすく解説します。

違い① 発症のメカニズム｜自己免疫異常か、インスリン抵抗性か

1型糖尿病と2型糖尿病の最も本質的な違いは、発症の仕組みにあります。

1型ではインスリンそのものが作れなくなり、2型では「作られていても働かない」「次第に量が不足する」という違いがあります。

違い② 症状の現れ方｜急激に進行する1型、気づきにくい2型

症状の現れ方にも、はっきりとした違いがあります。

1型では、喉の強い渇き、多尿、急激な体重減少などが比較的分かりやすく現れます。

一方、2型では症状に気づかないまま進行し、健康診断で初めて指摘されるケースも少なくありません。

違い③ 患者数の割合｜1型は約5%、2型は約95%

糖尿病患者全体に占める割合は、次の通りです。

日本で一般的に「糖尿病」と言われる場合、その多くは2型糖尿病を指します。

ただし、患者数が少ないからといって、1型糖尿病が軽い病気というわけではありません。それぞれ異なる病気として正しく理解することが重要です。

違い④ 遺伝との関係｜体質の影響はあるが原因は異なる

1型・2型いずれの糖尿病にも、遺伝的な体質の影響は関係しています。

ただし、どちらも遺伝だけで発症が決まるわけではありません。生活環境や日々の習慣が大きく影響します。

違い⑤ 治療の主体｜インスリン補充が必須か、生活習慣改善が基本か

治療の考え方も、1型と2型で大きく異なります。

2型糖尿病では、病状に応じて内服薬や注射薬、場合によってはインスリン治療が行われます。病状に合わせた適切な選択が必要です。

糖尿病1型・2型に関するよくある質問

糖尿病について調べていると、「どちらが重いの？」「治るの？」「生活にどんな影響があるの？」といった疑問を持つ方は少なくありません。

ここでは、1型糖尿病・2型糖尿病に関して特に多い質問を取り上げ、医学的な視点から分かりやすく解説します。

1型糖尿病と2型糖尿病では、どちらが重い病気ですか？

結論から言うと、1型糖尿病と2型糖尿病のどちらが「重い」と一概に比較することはできません。

1型糖尿病は、インスリンを体内で作ることができないため、発症時からインスリン治療が不可欠です。治療を行わなければ命に関わる状態になることもあります。

一方、2型糖尿病は初期には症状が乏しく、気づかないまま進行しやすいという特徴があります。その結果、放置されると合併症のリスクが高まります。

2型糖尿病は治るのでしょうか？完治と寛解の違いを解説

2型糖尿病についてよくある誤解が、「治る病気なのかどうか」という点です。

現在の医学では、2型糖尿病を完全に治す（完治する）ことは難しいと考えられています。

ただし、食事療法や運動療法、体重管理などによって血糖値が安定し、薬を使わなくても正常範囲を保てる状態になることがあります。これを「寛解」と呼びます。

寛解後も再び血糖値が上昇することがあるため、継続的な生活管理が重要です。

1型糖尿病は生活習慣と関係がありますか？ストレスは原因になりますか？

1型糖尿病は、生活習慣が直接の原因となって発症する病気ではありません。

主な原因は自己免疫の異常であり、食事内容や運動不足、性格などによって起こるものではありません。

ストレスについても、それ自体が1型糖尿病の直接的な原因になるとは考えられていません。ただし、強いストレスや体調変化がきっかけとなり、症状が表面化するケースはあります。

1型糖尿病の子どもは、学校生活でどのような点に配慮が必要ですか？

1型糖尿病の子どもは、適切な管理を行えば、基本的にほかの子どもと同じように学校生活を送ることができます。

ただし、次のような点について、学校側との連携が重要です。

医師の指示書や学校との情報共有を通じて、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。

1型糖尿病と2型糖尿病で、食事療法の内容に違いはありますか？

食事療法の基本的な考え方は、1型・2型ともに共通しています。血糖値を安定させることが目的です。

ただし、重点の置き方には違いがあります。

いずれの場合も、過度な制限ではなく、継続できる食事内容を医師や管理栄養士と相談しながら決めることが大切です。

放置は危険！1型・2型に共通する糖尿病の合併症

1型糖尿病・2型糖尿病は原因や治療法が異なりますが、血糖値が高い状態が続くことで起こる合併症は共通しています。

自覚症状が乏しいまま進行することも多く、「気づいたときには取り返しがつかない状態になっていた」というケースも少なくありません。

糖尿病の合併症はなぜ起こる？

高血糖の状態が続くと、血液中の糖が血管や神経を少しずつ傷つけていきます。

特に影響を受けやすいのが、細い血管や神経が集まる部位です。その結果、全身のさまざまな臓器に障害が起こります。

三大合併症｜目・腎臓・神経への影響

糖尿病で特に注意が必要なのが、次の三大合併症です。

• 糖尿病網膜症：目の網膜の血管が障害され、視力低下や失明の原因になる
• 糖尿病腎症：腎臓の働きが低下し、進行すると人工透析が必要になることがある
• 糖尿病神経障害：手足のしびれ、痛み、感覚の低下などが起こる

これらは初期にはほとんど症状がなく、定期的な検査でしか異常に気づけないことも多いのが特徴です。

動脈硬化による重大な合併症

糖尿病は、血管が硬くなる動脈硬化を進行させやすい病気です。

その結果、次のような命に関わる合併症のリスクが高まります。

• 心筋梗塞
• 脳梗塞
• 狭心症

これらは突然発症することもあり、糖尿病の管理が不十分な場合にリスクが大きく上昇します。

合併症は予防できる？早期管理の重要性

糖尿病の合併症は、必ず起こるものではありません。

血糖値を適切に管理し、定期的な検査を受けることで、発症や進行を遅らせることが可能です。

• 血糖値・HbA1cの継続的な管理
• 定期的な眼科・腎機能検査
• 生活習慣の見直し

1型・2型を問わず、「症状がない今こそ対策すること」が、将来の健康を守る鍵になります。

まとめ｜1型と2型の違いを正しく理解し、適切な治療へ

糖尿病には1型と2型があり、同じ「糖尿病」でも原因・進行・治療の考え方は大きく異なります。

1型糖尿病は自己免疫の異常によってインスリンが作れなくなる病気であり、生活習慣が原因ではありません。一方、2型糖尿病は体質に加え、食事や運動などの生活習慣が深く関係しています。

どちらの糖尿病にも共通して言えるのは、血糖値を適切に管理し、合併症を防ぐことが治療の最大の目的であるという点です。

「自分はどちらのタイプなのか」「今の治療は適切なのか」と不安に感じた場合は、自己判断せず、医師と相談しながら治療方針を確認することが大切です。

糖尿病は、正しく理解し、継続的に向き合うことで、将来の健康と生活の質を守ることができる病気です。早い段階から適切な治療と管理を行い、安心して日常生活を送れる状態を目指しましょう。

監修者情報
この記事は、〇〇クリニック院長、〇〇 〇〇医師の監修のもと作成されています。
（日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会専門医）

免責事項
本記事は、糖尿病に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスに代わるものではありません。個々の症状や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。